ある日、父がヘンな植物を買ってきた。蘭の一種で名は「キンリョウヘン(金稜辺)」。
大きさはひょろひょろの15センチ程度。いくつかツボミを持っているものの、咲いている花は
少なく地味な薄暗い紫色をしている。見た目は冴えないが、日本ミツバチを惹きつけるという。
父はこの情報を「蜂の会」で聞きつけ、仲間と共にホームセンターで購入したという訳だ。
値は980円と安い。とても観賞用には向かないので、安いのだろうか。まあ、これで
日本ミツバチが捕まえられるなら、安い買い物だろう。父がどれぐらいその効果を
信じて購入したかは知らないが、私としては話半分という感じで聞いていた。むしろ、
そんな花で本当に捕獲できるのか、と疑いの目で見ていたといったほうが正しかった。
父はそのぱっとしない花を母と私に見せびらかし、嬉しそうに蜂の巣マンションの隣へ置いた。
私の予想とは裏腹に、その実力はすぐに発揮された!
母が朝の7時半から騒いでいる。「お父さん、大変よ。蜂がキンリョウヘンに来ているのよ!」
設置して2,3日後のことだ。窓から巣箱を眺めると、キンリョウヘンにビッシリと蜂が
たかり、蜂球を作ってぶらさがっている。「見てみて、あそこ!」。黒い塊はわかりにくい。
ちっとも何処にあるのか、わからなかった。「何で分からないのよ~」。母がイラついている。
こっちは会社にいく仕度があり、そうそう構ってはいられない。
父は蜂仲間に一目見てもらおうと、興奮気味に電話をしている。
私が家を出る頃、目と鼻の先に住むHさんとSさんが我家に駆けつけた。
キンリョウヘンを買って日本ミツバチを捕獲したのは、父が一番初めだったこともあり、
2人ともどんな塩梅なのか、確かめようと訪れたのだ。
外では4人で、ヒャーヒャー盛り上がっている。朝から「蜂祭り」。賑やかである(笑)。
※キンリョウヘンのツボミ。